VERI's EYE

21世紀の世界を見据え「海外進出」の意味を問う。

 海外進出の真の目的は安い製品を作ることだけではない。最も大事なことは信頼と協力そして友好の構築である。大局に立って海外投資の目的について検証してみよう。

 

 まず、我々が前提条件として考えておきたいのは、現在我々が生きている世界は21世紀であるということだ。確かに20世紀の企業の価値観は「効率と生産性」だった。効率を上げ、生産性を上げれば企業の勝利は保証された。エネルギーや資源の浪費は考えずに新製品開発に成功すれば社会的勝者になれた。だが、我々は今このような価値観から決別し、21世紀を生きることが要求されている。したがって、20世紀には通用した「安い製品づくりのための海外進出」という概念からは、早期に脱却しなければならない。ただ安い製品づくりを追い続けると、ジプシー企業となり地の果てまでさまよわなければならなくなる。 

 

 そこで、海外進出をする時に考えておきたい事項(海外進出は安い製品づくりでなく、いろいろ魅力的な要因も考えられる)について検証してみよう。「海外進出に不可欠な5つの要因」とは何だろうか。

 

<その1> 賃金が安く勤勉で働き者の労働力を活用し、また政府の優遇措置を利用して安い競争力のある製品をつくるための工場進出

一般的な常識論であるが、競争力があり、付加価値の高い製品づくりは企業の生命線を確保することにもなるので、工業国の我が国とするとこのような目的の海外進出は今後も増加すると思われるが、海外進出をこれだけに固執してしまうことは21世紀という難しい世紀だけに危険を伴うことになろう。ジプシー企業にならぬよう、留意が必要である。

 

<その2> 進出国のマーケットを上手に活用する

ベトナムは世界各国や機関の支援や協力を得て、毎年高い成長を続けている。1人当たりのGDPは2,000米ドルを目前にしている。国内市場は着実に拡大し成長を続けていることを考えると、国内に根を下ろした企業のメリットは大きいはずだ。そして、ベトナムの地場産業と手を携えて(合弁や提携など)ベトナムに資本と技術を是非注入してほしいものだ。

現在のベトナムを考えると、かつて「三種の神器」を目標に汗を流し働いた日本の姿を見る思いがする。即ち、ベトナム企業と組んで共存を探る時期は確かに到来している。合弁でなく独資でもよい。単なる生産基地として利用するだけでなく、活力溢れる国内市場に是非スポットを当ててほしいものだ。国内市場にこそ大きな企業メリットが潜んでいるはずだ。「狙うのは今だ」と声を大きくして叫びたいものだ。

 

<その3> 投資国の可能性

ポテンシャルが高い国かどうかをよくよく見極めることが大事だ。将来、人件費が上昇してもあるいは政府のインセンティブがなくなっても、別な魅力のある国かどうかについて、よくよく検討することだ。

また、政治体制が安定している国かどうか、国内の権力対立は心配ないのかどうか、経済的な成長要因があるのかどうか、あらゆる側面から将来予測をしてみることが大事なことである。小欄は、ベトナムのポテンシャルは2枚腰の魅力だと考えている。国際化と工業化を強力に推進し、中進国への努力もしている一方で、21世紀のキーワードを食糧とエネルギーそして安全保障と位置づけるなど、指導部の先見性には目を見張るものがある。21世紀型の国としての魅力を残したまま国際化と工業化も同時に推進しているという現実を見ていると、その可能性の大きさは無限大である。

 

<その4> 投資先の政府への信頼

投資した資金や技術その他の知的所有権が保護され、保障されるかどうかは、政府の裁量次第である。それゆえ、信頼できる政府かどうかについてはよくよく検討することが大事である。ベトナムは、共通投資法第6条から第12条で外国投資の資金と知的所有権及び海外送金の保障を規定している。また、社会主義に対する不安を喧伝する人もいるが、ベトナムはホーチミン思想の国であり、マルクスレーニン主義の国でもなければ毛沢東主義の国でもない。指導部は、トロイカ体制で安定しており、反政府運動など皆無である。国民の格差をなくし、自由に行動させ、発言させ、年々豊かになっているため、政府に対する不満を唱える人はいない。

 

<その5> 進出した国が将来にわたり日本と共生し、共存していけるかどうか

ベトナムが21世紀型の国であることは前述したとおりだが、現在ベトナムの進めている工業化には、日本の技術と資金は不可欠である。一方、日本は国家として生き残るために食糧とエネルギーに余剰のあるベトナムの存在を無視することはできない。

日本とベトナムとはそれぞれ資金、技術、労働力、エネルギー、食糧などで真に共存共有できる唯一の国である。ましてや、大乗仏教の国、儒教文化の国でもある。共通の文化を持ち何世紀も前から信頼の厚かった国として、両国はこれからも共存を模索し続けるはずだ。地球上広しと言えども、共存できる最も望ましい国はベトナムということになる。生産基地以外のベトナムの魅力について是非再考したいものだ。 <窪田>