VERI's EYE

コロナ下でもプラス成長、新体制後の米中との関係はどうなるか
2020年もトランプ旋風で始まり、米中の貿易摩擦が更に激化し、欧州ではEU加盟国同士の関係がぎくしゃくし更にEUと英国が双方の着地点が見いだされないままにBREXITの交渉が続いていた。一方で2019年12月8日に武漢で最初の新型コロナ感染者が発生し、それ以降新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中に拡大し、トランプ旋風を上回る勢いで2020年末には感染者が8,000万人、死者が180万人を越すパンデミックが発生した。最大の感染者を出している米国は2,000万人、続いてインドが1,000万人、ブラジル770万人を超え、世界中の経済が大きな痛手を被っている。その中で中国での感染者情報をいち早く入手し、国境や空港の封鎖など迅速かつ厳しい政策を打ち出したベナムは、世界中で中国などと共に数少ないプラスの経済成長を記録し、賞賛を浴びて世界にその名を轟かせる結果となった。ぎくしゃくしたEUも新型コロナ対策と経済再生の旗印の下で独仏の強いリーダーシップにより再び結束を強めた。またEUと英国の交渉も2020年末ギリギリになって双方の妥協によりようやく締結された。一方で就任以来世界中を揺るがしたトランプ大統領はコロナ対策の不手際からその座を2021年1月に追われることになった。

2020年はベトナムがASEAN議長国であった。COVID-19の世界的な感染拡大という誰もが想定しえなかった事態の中で自国の感染を封じ込め、最終的にはオンラインでの会議になったが、数多くの課題別会議や首脳会議をうまくまとめASEANの結束を強固にした。そして首脳会議の最終日には、インドの離脱で締結が危ぶまれていた世界最大の自由貿易圏「地域的包括的経済連携―RCEP」がベトナムのリーダーシップの下で締結されたことは、自国第一主義を唱える国が多くなってきている中で多国間貿易の自由化の流れを維持できた画期的な出来事であった。

2020年は世界中の国が新型コロナウイルスで苦しむ中、ベトナムは第2、3波の影響を受けながらこれを最小限に食い止めプラスの経済成長を記録した。RCEP加盟15カ国の中でプラス成長を記録したのは世界銀行の予測によればベトナム2.8%、中国2.0%、ミャンマー1.7%とわずか3か国であった。ジェトロの2020年海外進出日系企業の実態調査によれば企業の約50%が2020年の営業利益が黒字となると回答しASEANの平均44%を上回り、今後1〜2年の事業展開予測では、47%が拡大、47%が現状維持、6%が縮小との回答でベトナムでの日本企業の意気込みを物語っている。またNNAの最新の景況感調査によっても有望な投資先としてベトナムがダントツの1位で51.1%、次いで中国が16.1%、インド9.7%と続き、これまで以上にベトナムへの関心の高さが伺える。2020年度のベトナムへの直接投資は285億米ドルと前年比25%減となったが、新型コロナウイルスが世界中で蔓延する中で素晴らしい実績であり、2021年に状況が改善されればさらに多くの投資が期待できる。また2020年の輸出は世界経済が停滞する中で2019年比6.5%増の2,815億米ドルとなり、貿易収支も191億米ドルと大幅な増と好調に推移した。しかし最大の輸出国米国に対しては2019年の黒字469億米ドルから33%増の627億米ドルへと大幅な拡大となり、米国から為替操作国として認定され、現在通商法301条に基づく調査が進行中でその結果次第では米国への輸出に暗雲が生じる恐れもある。一方でベトナムは米国や日本が唱える「自由で開かれたインド太平洋構想」の中では安全保障上ASEANの中では最重要なパートナーであり、バイデン新大統領の下、米国がどのような対応をするのか注目される。

一方、中国はベトナムも含めASEAN各国にとって最大の貿易相手国になり、米国の弱体化もありその影響力は年々強くなっている。2021年はベトナムの政治にとって重要な節目の年であり1月下旬に5年に1度の共産党の全国大会が開催され、グエン・フー・チョン現書記長兼国家主席の後任が選出される。後任候補としては親中派と言われるチャン・クオック・ブオン書記局常務や新型コロナ対策で手腕を発揮し親米派と言われているグエン・スアン・フック首相の名前が噂されているが、米中の対立が激化する中で次期書記長、国家主席、首相に誰になるのか、トロイカ体制をどのように組むのか今後の両国との付き合い方の行方も含め注目される。               (文責 守部裕行)